吉田寮裁判報告集会での日就寮生発言


2024年2月16日におこなわれた吉田寮裁判の結審に日就寮生6名が参加してきました。寮生の一部勝訴であり、非常に喜ばしい結果となりました。吉田寮裁判の経緯や詳細については吉田寮の公式サイトで詳しく説明されていますのでそちらをご覧ください。

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ここでは、吉田寮裁判報告集会での寮生の発言をアーカイブ的に投稿します。


 私は、東北大学の日就寮の寮生です。今回、日就寮は吉田寮の結審があるということで、寮生大会で吉田寮の結審に行こうということを議論して、来ました。なぜそのようなことを議論したかというと、弁護士の方もおっしゃっていましたが、吉田寮の裁判というのは全国の学寮にとって先例になるものなのです。それがどうなるかを、私たちはちゃんと見届けないといけない、それを全国の学寮の方と議論していかなければならない、そういう思いでここに来ています。したがってここで確認したいのは、今日勝訴してめでたいということではありますが、これは単に吉田寮にとっての勝訴だけでなく、全国の学寮にとっての勝利であるということです。今どんどんと廃寮する寮が増えている中で、私たちの学生自治というのが認められて、それが覆される転換点になるということを確認したいと思っています。

 やはり私は、今日の判決の前は非常に不安でした。これで吉田寮の完全敗北ということになってしまえば、私たちは、私たちの寮は後に紹介するんですけど、非常に人数が少なく、当局から大きい圧力を受け続けています。そうなると大学が「いけるんだ」となれば、すぐに廃寮のために踏み切って、裁判を起こして…となってしまいます。なので、ここで吉田寮がまけたら次は私たちだというそういう心持ちで来ました。

 日就寮の現状というものを少し共有させていただきたいと思います。

 東北大学の寮で、現在寮生数が20名ほどですが、数年前は、2019年に一桁まで減ってしまいました。今は少しずつ回復しているという状況になります。

 元々の定員は100人なので、なんとか今年は20人、来年は30数人にしていきたいと思っています。建物は1971年に建造されて、熊野寮よりは少し新しい程度ですが、吉田寮のように戦前からの歴史があります。日就寮は、吉田寮の方もおっしゃっていると思いますが、困窮学生のための福利厚生施設だというのを第一に掲げて、寮を守ってきました。ただ、寮自治といっても完全に入退寮選考権を持っているわけではなく、私たちも吉田寮や熊野寮のように留学生や全ての性別に対して入寮させたいという思いがあり、そのための活動もしようとしているますが、(大学)当局との力関係がうまくいっていない状況です。

 なぜ日就寮がこんなにも寮生数が減ってしまったのか。2000年代の前半までは常に定員まで(寮生が)いましたが、その理由として大学当局が、時代によって記述はすこし変化しているものの、過激派の拠点だとか、特定の政治党派の影響を受けている、といったようなネガティブキャンペーンを、新入生全員が見るようなものに書き、それを配っています。それを見れば、東北大というのは寮の数が多く、最近は留学生との混住の(家賃が)高めの寄宿舎というものができたりしているので、日就寮の寮生数が減ってしまうという状況にありました。

 やはり、「過激派の拠点だ」のようなネガティブキャンペーンが行われると、単に寮生数が減る以上の問題があります。たとえば、一旦うちの寮の理念とか空間的な面白さに惹かれて入ってきた人も、親や教員によって「そういう危ないところは出なさい」と言われて泣く泣く出ざるを得なかった人もいたり、入寮した後に、大学の職員と会う機会があって、退寮を勧めれたりなどがありました。学生がこれから学問をしていこうかと大学に入り、お金がないからという理由で日就寮を選んでくれて、でもそうした寮生が生活をしていくための基盤というのを大学当局が奪ってしまう。こういったことはあってはいけないという思いで、私はこのような寮自治の活動をやってきました。

 そこで、この記述をなんとか撤回させたいと色々大学に要求をしているのですが、ほとんど変わっておらず、なんとかこれを撤回させなければいけないというのが私たちの現状での課題です。あとはその過激派のレッテルを貼ることで、日就寮は隣接している寮があり、一部風呂とかを共用しているのですが、そういうところで日就寮だけの負担だけが大きくなることがあり、「改定していきましょうよ」みたいな話し合いを持ちかけても「いや、あなたたちは危ないんでしょ?」や、「そういうところとは話したくないです」みたいな感じで、会話のチャンネルが閉ざされてしまう、こうやって大学によって分断して統治されてきたという歴史があります。

 このような根本的な問題は解決していないんですけど、コロナの後に寮生が入る機会があり、それで弾みがついていろいろと広報とかをやってきまして、寮生数が徐々に回復してきました。最近は寮生数が本当に一桁とかになってしまい、寮委員会と一般寮生の区別がないような状況から、属人化していたものをちゃんともう一度軌道に載せることであったり、あるいはちゃんと寮が持ってきた文化、例えば差別をしないだとか、そういうものをもう一度浸透させていくためのガイドラインを作ったりなど、そういう地道な活動を中心に行っています。

 あとは、例えば吉田寮とかだったら「クラブ吉田」とかで、外部に寮を開くようなイベントをやっていると思うのですが、日就寮でもそのような活動を少しずつ始めています。

 あと、ネガティブキャンペーンを受けているだけではなく、入寮募集活動の妨害というものが続いていて、例えば来週前期入試があるんのですが、そういう時にキャンパスでパンフレットを配らせないと言われていて、去年はなんとか無理やり入っていって話し合って、(入寮募集活動のためのパンフレットを)配ることになったのですが、今年もそれができるのかが危惧されていて、そのために現在寮内でいろいろ議論しながら活動しています。

 そこで、はやり日就寮の状況というのは非常に厳しいんですけれど、吉田寮の勝利を見ていて、今後はその吉田寮でついた弾みをいかに全国の学寮で拡大させていくかというフェーズに入ったのかなと、今日の午後はずっと考えていました。で、やっぱり廃寮問題というものは深刻で、今年は東京農工大とか静岡大学の寮でも、自治療が廃寮になるということでして、昨日は私たちは熊野寮で開催されていた全国学寮交流会に参加していましたが、やはり自治寮をめぐる状況というのは非常に厳しい、というような面持ちでいたところで今日の判決だったので、非常に元気付けられました。私たちも本当に(寮生が)一桁しかいない時期に全国の学寮の方から支援をいただいて、それでなんとか寮を維持することができてきたので、今後ともその連携を拡大し、今日こうして呼んでいただけたように、全国の大学の学生自治の空間というものを拡大していければと思います。

 ここ最近大学自治をめぐって、国際大学卓越研究大学制度であるとか、国立大学法人法というものが追加され、本当にこう、大学の自治というのが将来どうなってしまうのか、すごい暗澹たる気分で自治の活動をやっていました。こういうことがあるというのは大学の、そして社会全体の新自由主義化というものがあり、さらには社会全体が新自由主義化するなかで個々人が分断されて社会との距離がどんどん遠くなり、それで社会を変えるために活動するというのがイメージできないという、そのような負のスパイラルが今私たちを取り巻いている状況だったのですが、やはりこのような吉田寮とかが粘り強い運動を行い、これだけの人を集めて、あるいは学内で集会をやってということができるというのは、鍋をつつきながらであるとか、そういう風にいろんな人と語り合えるそういう生活空間と社会が接続された交流圏というのがあるからこそ、こういう吉田寮の粘り強い運動があるのだと思います。だからこそ大学の自治を守っていくためには、このような学生自治空間というのは絶対に不可欠だと思います。学生自治寮、学生自治空間ということがあるということが、社会を変えていく上でも最も強い基盤になると私は確信していますので、全国の大学でさらに自治運動の拡大を目指していきたいと思います。ありがとうございました。